富士見坂

富士見坂





どこから見ても



富士が見えたら



そんな名前など



付くはずもない



朝には米を磨ぎ



昼には着物を畳み



夕には豆腐を買い



そうした合間の中で



うっすらとてっぺんが見え



まるで自分が聖人にでも



なれたような気になり



そうした空気を吸って



日々の血液に取り入れ



ただの急な坂道が



特別になってゆくから



どこから見ても



富士が見えては



いけなかったのだ






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