生きるのはどうしてこんなに苦しいのだろう、つらいのだろう。いえ、だからこそ喜びを感じることが出来る。闇があるから光が分かる。この世はあなたが必要だ。
行き詰まっていると感じる人へ
押し退ける 扉がひらいても どやどやどやと 人が這入ってきて 僕は出られない そして扉は閉まり 僕は立ち竦(すく)む 人を押し退けて 扉から出るのが 当たり前のような 世の中になった いやもしかすると ずっとそうであって 僕だけ知らずに いるのであろうか だけどどうしても 人を押...
誰かの独り言を聞くのが好きな人へ
太郎 イカに名前を 付けなくて良かった もしもここにある 輪切りのイカが 太郎とかいう 名前が付いてたら そして元気に 太郎が泳ぐのを 目を細めながら 見ていたとしたら とてもここにある 輪切りの太郎に 箸をつけるなんて できやしないさ そうだろう太郎? 美味かったよ
いつも自分を責めてしまう人へ
延命 時々ふいにほめられて ぼくはまたひとつ 寿命を延ばす そんなことでいいのかな 鏡は何も答えない さあ行くよ 結局自分で云うのだ
挫けそうになっている人へ
リセット これまでのすべて 消えてしまえばいい 叱られたこと 誉められたこと 幸せだったこと そして絶望したこと これまでの苦労は 苦しんで苦しんで ようやく辿り着けば 絶望だったなんて リセットボタンを 押してしまえばいい これで楽になれる これで何もなくなる 何もなくなる? ...
旅に出たいと思っている人へ
旅の音 さかなの死骸が 海に漂えば いつしか消えて 波の音になる ことりの死骸が 空に舞い散れば いつしか消えて 風の音になる わたしの死骸が 夢に囁(ささや)けば いつしか消えて 旅の音になる
何が正しいか分からない人へ
あたったら くじをひきましょ さあさああなた ひいてみなさい やあやあでました あたったあたった あなたがあたりだ それではさよなら あたりはさよなら いますぐここから たちさりなさいよ あたりはずれは みんなおなじさ さよならさよなら いいひとでした
最近停滞気味の人へ
ネット ゴミ袋が二個 ゴミ捨て場にいて 青いネットを被(かぶ)り じっと待っている ネットが覆っているのか ネットが絡まっているのか ネットに覆われているのか ネットに絡められているのか ゴミ袋たちは決して そんなことは考えない 青いネットを脱(ぬ)けて 転がり出ることもない
争いに疲れた人へ
障害物走 細い一本道をゆき 途中でつまづいて またはじめに戻り なんとか越えてゆくと 人ひとりの大きさの はしごのような穴を 尻を引っ掛けながら どうにかくぐり抜け 広げられたネットの その下に飛び込んで 目を細くしながら 喘ぐようにかき分け 隣と鼻を争い ようやく切ったテープは...
冬の蜥蜴 ちぎれたしっぽを 風にさらしながら 夜の目黒通りを よろよろ下ってゆく どの石陰もみな 凍るように冷たく いい塩梅の所は ここらには無いのだ 冬の星座だけが 毎晩の宴にも 飽きる気配なく きらきら騒がしい 支那そばの窓は 客のいない絵はがき それでも主人は言う これしか...
タミフル 人は飛べないなんて そんなのうそっぱちさ ほら僕を見てみろよ ほら羽ばたいてるよ あぁ人は本当に 飛べるほうがいいのか 時が来れば誰も 羽ばたいてゆくのに