白い舟

白い舟






手を差し延べることさえ



まるで何もできなかったあの日



きみは白い舟にのって



遥か彼方へ行ってしまった



波打ち際に座り込んで



光射す水平線を見る



潮風はつんと鼻を弾き



乾き始めた藻屑を濡らす



あれからずっと待っているのに



白い舟はやって来ない



きみを連れて行ってしまった



白い舟はやって来ない



きっとぼくは違う舟を



探さねばならないのだろう



ぼくは立って砂を払い



長い影の方へ歩み出す







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