クマゼミ

クマゼミ





はたして熱気であったのか



吹き出る汗であったのか



まるでわからなくなるほどに



クマゼミの湿った合唱が



もあんもあんと降り注ぎ



体中に貼りつくと



稲佐山の中腹の



樹蔭(こかげ)の夏を思い出し



あなたの右手の抜殻が



アブラゼミと名付けられ



木漏れ日にそれが輝けば



クマゼミのものであることを



心の内に秘めたまま



ついに言えずに夏は過ぎ



いつまでもこうして手の上で



もあんもあんとないている





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