一輪挿し

一輪挿し





ねえ ぼくは



だれのもの?




たったひとりで



下駄をつっかけ



外へ飛び出し



うわあ暑いと



すぐに音を上げ



涼しいお店で



ぼんやり座り



窓枠の外には



見知らぬひとが



交通整理の服で



赤い棒を振って



ぼくのことなど



おかまいなしに



突っ立っていたり



走り出したり




ねえ ぼくは



だれのもの?




いまのぼくは



だれのものでもない



たとえば急に



息を止めても



どうしたのと



聞くひとはない



そこらにある



一輪挿しと



なんら変わらぬ



つまりきっと



いまのぼくは



すべてのものだ



だれのものでもない



すべての中の



一輪挿しだ





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