それでも雨は洗い流す
赤く油光りしていた
大きなヒキガエルだった
梅雨の雲から押し入る太陽が
ぐらぐらと煮え立っていた日
人間様が往き交う足元で
この生物はじっと涼を待った
人間様はこの生物を見て
時折暑さを忘れて微笑んだ
やがてもっと大きな生物が
地響きを立ててやって来た
人間様がつくった生物で
ダンプカーと名が付いていた
赤く油光りしていた生物は
あっけなく潰されてしまった
ひとりの人間様がその音を
熟れたてのトマトが潰されたような
産まれたての卵が潰されたような
そんな音を少し遠くから聞いた
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