それでも雨は洗い流す

それでも雨は洗い流す




赤く油光りしていた



大きなヒキガエルだった



梅雨の雲から押し入る太陽が



ぐらぐらと煮え立っていた日



人間様が往き交う足元で



この生物はじっと涼を待った



人間様はこの生物を見て



時折暑さを忘れて微笑んだ



やがてもっと大きな生物が



地響きを立ててやって来た



人間様がつくった生物で



ダンプカーと名が付いていた



赤く油光りしていた生物は



あっけなく潰されてしまった



ひとりの人間様がその音を



熟れたてのトマトが潰されたような



産まれたての卵が潰されたような



そんな音を少し遠くから聞いた






0 件のコメント :

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。

詩集『ふじちょう』─詩的ぶるぅす集─【税込550円】

詩集『ふじちょう』─詩的ぶるぅす集─【税込550円】
本サイトの詩からピックアップして2011年に自費出版したオリジナル詩集。購入をご希望の方は画像をクリックしてメッセージフォームからお知らせ下さい。