烏兎怱怱(うとそうそう)

烏兎怱怱(うとそうそう)







一本の樹がある



これはお前がまだ



欲望をつかむ手も



さっとはかってしまう目も



持ちあわせてはおらず



米粒の細胞はおろか



糸ミミズの遺伝子でさえ



存在しなかった頃に



すっかり伸びていた樹だ



それでもお前はいま



樹に手を添えながら



先祖を弔うように



寛く優しい気配で



この樹の元へと



いつしか追いついていた







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