谷地

谷地





ざぶざぶと湿地帯は続く



誰も足を取られ消耗する



表情には疲れの色ばかり



口をきく者もいなくなった



現代という谷地(やち)は薄暗く



霞の遥か向こうは見えない



後ろには悪鬼(あっき)が迫り来る



炎のように沸き立つ悪鬼だ



薄暗いのにぎらぎらしている



谷地を進むよりないのだ



霞の遥か向こうを目指して



冷たい水はもうずっと前から



脚の皮膚に貼りついている






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