ていかかずら

ていかかずら







もう忘れてしまった



駅の印象だとか



商店街の名前だとか



もう忘れてしまった



八百屋のおじさんとか



ラーメン屋のスープとか



もう忘れてしまった



路地裏の黒いネコとか



植木いじりのおじさんとか




ていかかずらの匂いが



どこからともなく漂うと



忘れてしまった街が



そのたびごとに甦る



晩春の風に乗って



街は香りに包まれた



うまくはいかない人生で



幸せでもあった日々



忘れられるかなしさに



ていかかずらは花開く








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