祭りのまえ

祭りのまえ







風鈴が鳴らないから



二三度無理に鳴らしてみた



透明なガラスの中



金魚がそわそわ驚いている



まだいるはずのないトンボが



ぼくの前を通り過ごした



大きな鯉がはねると



波紋が胸に押し寄せてくる



絶滅したはずのキツネが



一声あげて神社に消えた



世の中は案外動いている



遠くの方で花火が上がった



風鈴が鳴らないから



もう一度鳴らして外に出た








0 件のコメント :

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。

詩集『ふじちょう』をamazonで購入