越冬

越冬







冬を越した蚊になって



ぼくはふらふら飛び回る



行く宛てなどないことは



ずっと昔に知っている



嗄れてしまった声なんて



誰が聞いてくれるやら



よろめく姿に人はただ



手で追い払う真似をする



ただそれだけのことなのに



あぁぼくはうっかり愉悦する



人の毛穴の懐かしき



温もりとやらに愉悦する











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