堕ちた栗

堕ちた栗






会社がいくつも入っている


大きなビルの入口に


たくさんの人の靴の音


ひとつの栗が堕ちている


茶色いトゲの殻が割れ


焦げ茶色の実がこぼれ


誰が堕とした栗なのか


誰も気にもしていない


憤懣が捨てられたように


役目をようやく終えたように


まだかたいトゲをつけ


ひっそり栗は堕ちている


冷たく乾いたビルの風


やがてどこかへ消えるだろう


春がきてまた夏がきて


やわらかいトゲに触れてみたい












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