生きるのはどうしてこんなに苦しいのだろう、つらいのだろう。いえ、だからこそ喜びを感じることが出来る。闇があるから光が分かる。この世はあなたが必要だ。
次に向かって進むべき人へ
空気入れ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ よぉ 元気かい あぁ 元気になったよ たった今ね
この頃視野が狭いと感じる人へ
大いなる力とともに 火はすべて燃やしてしまう 水はすべて浚(さら)ってしまう ぼくたちはいつでも 準備しておかねばならない 燃やされ浚われたときの こころの有様(ありさま)というものを
誰かの独り言を聞くのが好きな人へ
一枚の布 一枚の布がある 大きな大きな布だ それが張られている そして上に立っている 一歩踏み出してみる 足が大きく沈む もう片方を出してみる バランスを何とか保つ 周りを見渡してみる みんな何事もなく過ぎる さっさと行くサラリーマン セールに走る女たち ぼくだけがおかしいのか ...
近頃気づきを得ていないと思う人へ
濡れねずみ 海を見ようと思って 岩場に座っていただけ ずぶ濡れになるなんて 思いもよらないことだった 取り返しのつかないことを 人は時にやってしまう 濡れねずみになってから やっと体が震え出す
地球環境と人間生活を考えている人へ
習性 がらんどうなところに 人は集まりはしない それなのにせっせと 地下を掘り続ける カネをベルトに挟み きれいな手と顔で カエルの棲み家を襲い シャンパンを飲み干す がらんどうなところに 人は集まりはしない 労働者たちは今日も せまい座敷で賑わう
考えるばかりで行動できない人へ
真実の橋 この橋は朽ちている 男どもは話し合う 渡れば抜けるだろう はじなら大丈夫だろう いや一歩として危ない 新しい橋を架けよう 向こう岸から女ども 談笑しつつ渡ってくる 摘んだらしい白い花 それぞれの手に一二輪 男どもは声もなく 一人二人渡りゆく
やめるかやめないか考えている人へ
旗手 旗を掲げることが かれの仕事である たとえ風が強くとも たとえ腕が痺れても 旗を降ろしてしまえば かれは旗手でなくなる そのことをよく知るのは かれ自身なのである
子どもの頃を忘れてしまった人へ
買物の途中で ぼくはかなしい 毎日ダメって言われるから ぼくはせつない 毎日ダメって言われるから ぼくはくるしい ぼくはおもたい ぼくはダメなの? ぼくはしにたい 毎日ダメって言わないで ぼくを置いていかないで
大切なものを失った人へ
葉縁 死体の山の上にも いつか花が咲きやがる 悍(おぞ)ましさなどない 悲しみさえもない 雨に濡れた葉縁(はべり)から 水が落ちるようなものだ やがて雲を割って 光の根が降りよう
挫けそうになっている人へ
黎明の声 背中をくっと突き破り 真っ白な僕が出る これまで暗い土の中 ただじっと閉じていた すべての生命体をして 埋め込まれたプログラム 黎明の空を切り裂いて 作動させたのはどの声か それは誰にもわからない されど誰にも注ぎ得る 白い僕は時につれ 土の色を帯びてゆく