コントラバス

コントラバス





この舞台から降りると



わたしはまた担ぐのだ



練習場所に行くため



次の演奏に行くため



真夏の暑い日には



汗を搾り出しながら



厳冬の凍える日には



指先を軋(きし)ませながら



わたしはまた担いでゆく



そして時々考える



身長ほどもあるものを



どうして連れて回るのだ



出会わなければ良かったと



これでお終いにしましょうと



呟いた秋の夕焼け空



わたしはなんなのだろう



隣に横たわるコントラバス



いいえそれはわたしだった



わたし自身に他ならなかった



わたしはわたしを担ぎ



わたしはわたしを連れて



また舞台の上へゆくのだ



わたしは一音一音になって



旅立ちまた帰ってくるのだ






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