見えない一滴
指先から絞り出した血が
ぽとりと一滴落ちた所は
晩御飯の買い出しに通うような
ご近所の人たちが立ち話するような
散歩の犬と犬が咆え合うような
子どもがわあわあ走り回るような
ごくごくありふれた町の通りの
ごくごくはじっこの目立たぬ所で
およそ誰も気づくわけがなく
あるいは散歩の犬が嗅ぐくらいで
ここだここだここなんだようと
白いチョークで目印をつけてあげて
ようやく何だ何だと顔を近づけ
乾いた一滴の血を見つけてもらい
ああ血を流すだけではだめなのだと
白いチョークは折れそうなほどだった
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