クスの木と雲

クスの木と雲







白髪の紳士が言った



人生は一度きりだ



鳩が一斉に飛び立ち



空を一瞬暗くした



この低く覆う雲も



いつか青くひらけるだろう



思い悩んでいるならば



あのクスの木を見るがいい



曲がりくねった枝枝は



思い悩んだ表れだ



太く天を突く幹は



それでも貫いた証しだ



雲になっていた鳩が



クスの下に舞い降りた



白髪の紳士はもう



背中を向けて歩いていた







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