秋の声

秋の声






ビルの屋上のどこかで


コオロギが鳴いている


誰を呼んでいるのかも


彼自身はわからない


ただ鳴かずにはいられず


ヒリヒリと声を出している


空が近い場所だとは


きっと思いもしないだろう


向かいのビルの窓々は


煌々と明りが灯る


湿った夜風がどこからか


明りを撫でて去っていく


鳴いていたコオロギか


手すりの上を歩いている


さっきの夜風に飛ばされず


向かいの明りを目指している













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