くすのきの一生

くすのきの一生






小さな芽を地面から出し


右に左にかしげながらも


胴は次第に土色を帯びて


一端(いっぱし)の木蔭をかざした頃


人煙が立ちのぼり始め


秋風に稲穂がさざ波


賑やかな祭りの提灯と


学校のチャイムの旋律


時は経ち空は区切られ


木蔭が大きくなるほど


コンクリートのくもの巣と


細長いはちの巣があふれ


働きものの家来たちが来て


あっさり切り倒されたとき


木蔭で永遠(とわ)を誓ったのを


老夫婦は思い出していた







2013.9.13

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